医薬品を管理するためには、その医薬品が持つ膨大な情報を効率的に取り扱う必要があります。
本記事では、異なるシステムやデータベース間での情報の共有や統合が必要な場合に重要な役割を果たす、コードの標準化と病名のシソーラス化について解説します。
標準化の重要性
例えば、病院があるデータベースの管理に独自のコード体系を用いている場合、そのコード体系が他の病院やデータベースと互換性を持たないと、システムの入れ替えやデータの移行が非常に困難になります。
具体的には、新たに電子カルテシステムを導入する場合など、既存のシステムのデータベースとの間でコードの互換性がなければ、新システムに大量の既存データを移行する際、各データを手作業で修正しなければならず、大変なコストと時間を要することになります。長年独自のシステムを使ってきた医療機関は、このような大きな問題に直面することがあります。
同義語のシソーラス化
さらに、副作用名や病名には同じ意味を表す言葉でも異なる表現や表記揺れが存在します。
例えば、「Stevens-Johnson症候群」、「スティーヴンス・ジョンソン症候群」、「皮膚粘膜眼症候群」、「SJS」は、いずれも同じ病態を指す言葉です。単純に文字情報として扱った場合はこれらが別のものとして認識され、情報の集計や解析を困難にします。
これらの異なる表記を同一の意味を持つものとして認識できるようにするために「シソーラス化」が求められます。シソーラス化とは、簡単に言えば異なる単語をその意味によって関連付けることです。
→ データインデックスが提供する医薬品データベースの詳細はこちら
標準化とシソーラス化の取り組み
医薬品コードの標準化は、すでに国際的な取り組みとして行われています。「Unique Ingredient Identifier(UNII)」や「Global Trade Item Number(GTIN)」などの医薬品コードは、各システム間での情報の統合や共有を容易にし、医薬品の管理を効率化します。
また、例えば、国際的な病名のシソーラスである「国際疾病分類(International Classification of Diseases, ICD)」は、世界保健機関(WHO)によって開発された統一的な分類体系で、多くの国で使用されています。ICDを用いることで、異なる病名の表現を統一的に扱うことが可能になり、医療データの比較や分析が容易になります。
さらに、近年では自然言語処理技術の進歩により、病名のシソーラス化をさらに高度化する試みも行われています。例えば、機械学習を用いた自動的な病名の同義語検出や類義語検出の研究が進められており、より正確で包括的な病名のシソーラスを構築するための新たなアプローチが模索されています。
しかしながら、標準化やシソーラス化には課題も存在します。異なる国や地域、医療機関間での標準化の違いやシソーラスの整備の難しさ、新たな医薬品や病名の登場による更新の必要性などがあります。また、プライバシーやセキュリティの観点も考慮する必要があります。
医薬品の管理における標準化とシソーラス化は、効率的な医療データの管理や分析を可能にする重要な取り組みで、今後ますます重要性が高まっていくことが予想されます。
―参考資料―
ヒアレイン点眼液0.1% 添付文書(2022年7月改訂:第1版)
ムコソルバン錠15mg 添付文書(2023年4月改訂:第1版)
リブタヨ点滴静注350mg 添付文書(2023年3月改訂:第2版)